みなさんこんにちは、サークルブログでは一年ぶりの老害あべたです。
いつのまにか学部を卒業して修士になりました。
つい先日開催されたジャパンリーグに三津井と2人で参加してきましたのでその報告です。
今年のジャパンリーグも中国からGM、WGMが2人ずつ派遣され、
さらにはイギリスやフランス、台湾在住の方まで様々なプレイヤーが集まりました。
あとはちびっ子たちがたくさんいたのも印象的でしたね。
これからのチェス界を担うであろう子どもたちが多いのはいい傾向ではないでしょうか。
それではさっそく振り返っていきましょう。
1R目はレベルに差のあるあたり方をするので、なかなか番狂わせが起きない。
ところが自分がレーティング500以上も上の方に勝利するという事件が起きました。
早指しされて持ち時間も1時間差になっていしまい、20手を過ぎるころには1,2分しか残っておらず局面以外にも時間的な意味でピンチでした。結果的に勝てたのでその点についてはよかったなと。
これまでのゲームを振り返ってもレーティング2000オーバーに勝利したのは初めてでした。
JCAレートにいたっては、これまで当たった中でも一番高い相手でした。2Rも苦しいゲームでしたがなんやかんやあって勝ち、初日をまさかの連勝スタートで終えました。
すると2日目にまたも事件が。
なんと3R目に中国から派遣されたWGM・Wang Jueと対局することになったのです。
今回は彼女とのゲームを紹介したいと思います。
Y. Abe - J. Wang1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 Na6
ペアリングが発表されてから彼女のゲームにいくつか目を通しており、
この変化かメインの6.…e5 7.O-O Nc6のどちらかが来ると予想していました。
後者の方の対策はしっかりしてあるので問題なかったのですが、本譜のNa6はあまり自身がありませんでした。
7.O-O e5 8.Be3 c6 9.dxe5 dxe5 10.Qxd8 Rxd8 11.h3 Re8 12.Rfd1 Bf8
自分が事前に調べていたのは8.…Ng4でしたが別な手が飛んできました。
d5突きが最善だったと記憶していますが知らない道に入るのに抵抗があったので、イコールにされることを許して多少見覚えのある形に路線を戻すことにしました。
この変化は黒のNがa6-c5-e6-d5と跳ねることで高ポジションに配置することを目指します。
一方白は、現時点で利用できるマスがないのでひと工夫が必要です。
また、黒の12.Bf8のおかげでNのc5への侵入は阻止できなくなりました。
そこで白は、Nc5に対してb4と突くことでc5マスを抑えたいところ。c4→c5と突くことができれば将来的にd6マスを利用できるポテンシャルも秘めており、その準備の意味も兼ねています。
しかし、Nc5の瞬間はe4ポーンがアタックされているのでb4と突くことができません。つまり、これを踏まえて上記を達成するための次の一手は…
13.Nd2!Nc5 14.b4 Ne6 15.c5 先にe4ポーンを守っておき、すぐにb4を突けるようにします。
一見、Nが自ら引いているのでパッシブに見えますが、これは後々、d2-c4-d6と跳ねて敵陣深くにNを置く狙いもあります。
本譜の手順(15.c5)でd6マスが使えるようになるのがおいしいです。
15.…Nd4 16.Bd3 a5 17.a3 Be6
Nd4とされても実は何も起きません。ただし、何も起きないように維持するために若干ピース配置が微妙なことになってしまいました。ここでは18.Ne2としてこのNを交換してしまうのがよかったでしょう。しかし次の一手で均衡が崩れてしまいます。
18.f3? Red8 19.Bg5 Be7 20.Bc4?? Nc2! 21.Ra2 axb4 22.Rxc2 bxc3 23.Rxc3 Bxc4 24.Rxc4 Rxa3
f3とBc4と悪手が続きました。白陣のいろんなピースが浮いてしまっているので何かイヤな予感がしましたが、やはり起きてしまいました。
白陣が崩壊し始めました。
ここから以下の手順で粘っていきましたが、流石マスター、この1個のポーン差を確実に勝利に結びつけました。
25.Rb1 Rd7 26.Kh1 Ra2 27.Nf1 Nxe4 28.Rxe4 Bxg5 29.Rxe5 Bf6 30.Re8+ Kg7
31.Rb8 Rc2 32.Ne3 Rxc5 33.R8xb7 Rxb7 34.Rxb7 Rc1+ 35.Kh2 Be5+
36.g3 Rc3 37.Ng4 Rc2+ 38.Kg1 Bxg3 39.Rb3 h5 40.Ne3 Bf2+
41.Kf1 Bxe3 42.Rxe3 Kf6 43.Re4 Kf5 44.h4 f6 45.Ra4 c5
46.Ke1 g5 47.Kf1 c4 48.Ra5+ Kf4 49.Ra6 f5 50.hxg5 Kxg5
51.Ke1 h4 52.Ra8 h3 53.Rh8 h2 54.Kf1 Rc1+ 55.Kg2 h1=Q+
56.Rxh1 Rxh1 57.Kxh1 c3 投了 0-1
8/14 Japan League 2016 Round3
Y. Abe - J. Wang終わってみればフルボッコのゲームでしたが
オープニングの手順がわからなくても
途中まではしっかり考えてついていくことができました。
また、WGMのピースの使い方の高い技術を、ゲームを通して学ばせてもらったのは何より貴重な経験だったのではと思います。
何もできずに負けたゲームでしたが7試合の中で一番楽しいゲームだったように感じます。
今回の刺激で、より高いレベルを目指したいと思いました。
また、大会そのものの成績は初日の2連勝からの4連敗、そして最終日の勝ちで3ポイントでした。
Aクラスの入賞を目指していましたが0.5ポイント足らず4位でした。
大会全体を通した内容としては、序盤で時間を使いすぎてしまい、大事(そう)な場面で丁寧に読みたい局面になるころには1分も残ってない状態になることが多く、時間切迫の中での弱さが目立ちました。
公式戦で最も長い時間でこうなってしまうので、時間云々じゃないところで問題アリな気がしてきました。
いい手は時間をかけられたら誰でも見つけられる。ってどこかで聞いたことがあります。
強い人はいい手を短時間で見つけられる、同じ手順を読むのが他人より短時間でできる、というわけです。
で、いい手を見つけるのに時間がかかっているという現状は、つまり読む価値もないような悪い手を真剣に読んだり、そもそもプランが見えていないからそこから考えてる分時間がかかってしまっているのだなと感じます。
��そもそもプランが正しいのか確認するために考えるのも無駄ポイントですね)
そう考えると、時間がなくなって苦しんでいるのは単純に自分の力量不足であるという絶対的な事実が浮き彫りになっていきます。
つまりそういうことである(真顔)
今後の課題ははっきりしました。
時間切迫に弱いのではなく、時間切迫に陥ること自体が問題。
もちろん考えなしに指して局面を悪くしてしまっては本末転倒ですが、同じ局面にたどり着くまでの時間が短縮できるに越したことはありません。
そのために必要なのは
中盤における正しいプランの考え方、そして直感力(経験則ともいう)を養うこと。
直感力が高ければ、考えるまでもない手を読む無駄な時間が減るので結果的に他の場面で考える時間ができます。
具体的には自分が遭遇した数々のオープニングのゲームを鑑賞して
どんなプランが存在するのか、また、そのプラン実行のためにどんなアイデアがあるのかをゲーム鑑賞で疑似的に体験すること。
また、Blitzを直感のみで指して実際のベストムーブと比較・修正することで直感力の矯正をしていこうと思います。
今の自分の棋力向上のための解決案が以上です。
もちろんこれに加えてタクティクスの強化とベーシックなエンドゲームも少しずつこなしていくのも欠かさず取り組んでいきたいですね。
棋力は少しずつでも伸びているとは思いますが、まだまだ結果が伴わなわず、大会で後輩が入賞しているのを見ていると自身の伸びの遅さにもどかしさを感じてしまいます。
ここまで読んでくださった方で、ご指摘・アドバイス等ありましたら
コメントしてくださるとうれしいです。
毎度のごとく長くなってしまいましたが、本記事は以上です。
今回のジャパンリーグ記事は2本立ての予定です。
Part2(こちらは三津井が担当)もぜひ読んでくだされば幸いです!
私からは以上です。
筑波大学チェスサークル2代目部長
阿部 (博士前期1年)